・三国恋戦記二次創作
・黄巾の乱時代、洛陽へ移動中のお話
・仲謀一人称
・ギャグを目指したのに語りが多い

今よりずっと緑豊かな三国時代、きっと嫌になるくらい虫もたくさんいたのでは、と妄想したネタです。
かぶっちゃってたらすみません……。
Gらしきものがでてくるので超ダメって人は絶対に避けてください☆

■ソレはゴのつく嫌なやつ
妙な女。
俺は宿の隣の部屋にいる奴について考える。
本来なら俺を欠いた江東が現在どうなっているかを憂うべきかもしれない。
実際兄上の死以来、常に孫家の当主としてどういった行動を取るべきか考え、そうしていた。
絶えず周りからは地位への媚びと「若輩が当主の位を務められるのか」という猜疑が入り混じった目で見られてきた。
そんな絶えず緊張感のある日々を送ってきた訳だから、正直、現状を受け止めきれたとは言いがたいけれども。
「案外、そう悪くもないな…」
宿の薄く堅い布団に寝転がり、暗がりの中で薄汚れた天井を見つつ呟いた。


……この状況に陥るまで、野戦だってこんなひどい寝具で寝たことねーぞ。
宿に泊まれるだけ今日はマシなほうだった。
結構自分は柔軟性に富む人間なのかも知れない。
良くはわからないが、何故か俺は10年は前の世界に来ている。
しかも、よく素性がわからない敵陣の軍師見習いを名乗る女と二人で。
女としても、人間としてもああいったタイプの人間に俺は会った事がなかった。
『水をかぶって、頭を冷やしてるんじゃないんですか?』
とんでもなく無礼で、世間知らずで、鈍感。
しかし、妙なところで鋭く、頭の回転も悪くはなさそうだ。
直ちに京城へ戻らなければという焦燥感はそのままだが、重責が一切ないこの生活がもう少し続いても悪くは無いかもしれない。
……なんて。
「思うわけ、ねーだろ……」
一瞬本当にそれも悪くはない、と思いかけたことを打ち消した。

それにしても、宿の壁は薄い。
寝返りしたら衣擦れの音が聞こえそうだ。
あいつはもう寝てるのか、隣から物音はしない。……独り言、あいつに聞かれてたら情けねーな。
そんなことを思ったとき。
「……きゃ…」
急に隣の部屋から微かな悲鳴の後、ガタガタン、という衝撃音が響いた。
一気に緊張が走り腰の剣の柄に手をかけ抜刀に備える。
賊か?それにしては進入する音も気配も一切しなかった。
抜けてるところがある奴だからおそらくは一人で転んだとかじゃねーかと思うが、万が一のこともある。
「様子、みてくるか…」
別に、夜這いとかそんなんじゃねーぞ、お前がなんか騒いだ声がしたから俺様が親切にも様子を伺いに来てやったんだ。
もし何事もなかった場合に言うつもりのセリフを心の中で呟きつつ俺は部屋を出て、あいつのいるドアの前に立った。
「おい、」
何かあったのか、そう言おうとした瞬間、ドアが猛烈な勢いで開きあいつが飛び出てきた。
「ぅわーん!!」
「おいっ」
「……ちゅう、ぼう!!」
俺を認めるなり、がしっと正面から抱きつく。……って。
「なっなんだよ、お前は!!」
思い切り、あせる。
何だこの展開。
「……良かった」
「はぁ、ってか離れろよっ」
「良かった、仲謀がいて……」
「は!?」
囁くようにいわれたこの言葉で、俺の体温がますます上昇した気がする。
なんだなんだこいつ、この展開。
俺は焦って、こいつの二の腕を強く掴み、距離をとった。
「なんだよ、一体。部屋の中になんかあるのか?」
部屋の中に足を踏み入れた。
「……だめっ!!」
瞬間後ろから強く掴みかかられる。
「んだよ、さっきから」
距離が近すぎるだろうが。
引き剥がすのも面倒になり(また手に触れなきゃならなくなる)俺はそのままこいつを腰にくっつけてズルズル進んだ。
「?なんだぁ、何ともないじゃねえか。」
月明かりのみで薄暗い部屋は俺たち以外の侵入者は居ず、別段異常な様子は無い。
「おい、何があったんだよ」
「……む」
「はあ!?大きい声でいえっつーの」
「むし……」
指差した先には確かに小さくはない虫が見えた。部屋の隅でじっとしている。
「なんだよ、まぎらわしいな、強盗かと思ったじゃねーか」
安心した。なんだ、こいつはこんなことで騒いで俺様を部屋に来させたのか。いい度胸だな。
「……こんなことじゃ、ないよ…」
「!さっさと離れろっ」
賊でないと安心したら、急に冷静に俺とコイツの体勢を自覚して、思わず大きな声がでてしまった。
完全に俺が後ろから抱擁されてる体勢じゃないか。
動揺なんて俺様は断じてしてない、そう自分に言い聞かせる。
虫ぐらいでめんどくせえ奴。
腰に回ったこいつの手を離そうとすると、触れたその手首は随分華奢で、かすかに震えていた。
「……っ」
「やだっ、動いたら飛ぶもん!!」
どうやら、俺たちが動いたら虫も移動する、と言っているらしい。
柔らかな体、華奢な腕。
……一度自覚してしまうと、俺の体に密着したコイツの体をやけに意識してしまう。
まぁ貧相だけどなっ。
「さっさとどうにかしないと余計飛ぶだろうが」
「っ!!」
腰に回された腕に一瞬力が入り、緩められた。
「……ちゅう、ぼう…」
「離せって言ってんだよ!!さっさと追い払ってやるから!」

全く、この俺様に虫退治させる奴なんてこいつ以外今までいない。
「この貸しはでけーからな。」
「仲謀、ありがとう。……おやすみ。」
あいつの感謝の言葉を背中でうけつつ俺は隣の部屋へ戻った。
まったく、今日は散々だった。
明日も早いさっさと寝ようと寝台に横たわる瞬間、ふいにあいつに密着した感触を思い出す。
一瞬頬が熱くなった気がしたが、これはなんだろう。
「まぁ、貧相なりにがんばってるじゃねーか。」
呟いてふん、と鼻をならした。


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自覚前のちゅうぼうでした。
その晩花ちゃんのことでもんもんとしてるといい。
きっと花ちゃんはさらに虫が出る可能性なんて一切考えず、いなくなった安心感で熟睡してるハズです。

公瑾は「ご自分でどうにかなさったらどうです」とかって冷たそうです。好感度MAXだったら退治してくれるか!?
早安はあっさり退治してくれるでしょう。
子敬さんはおっとり退治しようとしたら飛んじゃって花のスカートにとまったり余計ヒドイことになりそう、なんて。

他のキャラでも書きたいな。

※拍手お礼SSは、Gの話だったのでさらにGネタで。キモチワルイ度はUP。しょーもない話です。師弟の話。
孔明ラブな方には申し訳ない、ほんとうにひどい扱いです。衛生的な意味で。

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