・Pretty☆Witch☆Academy!二次創作:アキト→ユメ
※18禁乙女ゲー

☆アカデミー入学後、しばらくして。

【君だけに恋してる】様(http://kimikoi.koiwazurai.com/)よりお題を拝借いたしました。
なんだかアキトは相変わらず精神的にギリギリかつクタクタな感じです。
ちょっと変態です。青春っていいですね。
施錠うんぬんは完全に捏造です。

■ほんの少し手が触れただけで手が、

            君が隣にいるだけで君がいる方の肩が、すごく熱い

最近あいつは妙に頑張っている。いくら俺でも認めざるを得ないくらい。

入学当初はいつ「アマツに帰る」と言い出すかと思っていたが、これほどに頑張り成長するとは全く予想していなかった。
「俺も負けてらんねーな…。」
苦笑と共に小さく呟いた。
俺は放課後ほぼ図書館塔で予習・復習をしている。クラスの奴らはグループで教えあったりしているようだが、俺はそれほどに親切ではない。
ユメは玉麗やシャルロッテ、それにユーリたちと勉強会をしてるようだ。
「アキトも…一緒にどうかな」
初めはユメも誘ってきたが、俺が断り続けたらさすがに最近は誘ってこなくなった。
それはそれで、結構しゃくに障る。

そんなわけで、最近いらいらすることが増えたせいか以前に比べ日常生活においてミスが増えた気がする。
今も、そうだ。
ノートを教室に忘れたようだということに気がついたのは図書館塔へ移動した直後だった。
とりあえず違う教科の復習をすることにしたが、気がつけば既に時刻は夕方。
校舎が閉まるまでに教室に戻り忘れ物を回収しよう、そう思い、放課後の校舎を一人歩いていた。
世界最高のアカデミーだけあって、授業終了後も学生は校舎ないし図書館で勉学に励んでいる。
しかし間もなく校舎が閉まる今の時間帯、ほとんどの生徒は寮ないし校舎よりもっと遅くまで開いている図書館へ移動済みであり、校舎に人影は無かった。
聞こえるのは俺の足音だけ。
腹も減ったし、さっさとノートを見つけたら寮に戻るか、そう考え教室のドアを開けた。

「……なんで」
誰もいないだろうという予想は外れる。そこにはある意味、一番会いたくないけど会いたい相手がいた。
「ユメ?」
机の上に突っ伏して眠っているようだ。肩が規則的に上下しているところを見るに、熟睡しているらしい。
最近の頑張りを見るに睡眠時間を減らしているのは明らかだったから、疲れがたまっているのだろう。
しかし、それで疲れて昼寝してたら意味ねーだろ。
冷静にそう突っ込みつつ、体調も心配ではあって。ゲルハルトに質問でもしていたのだろうか。
ユメは意地もあるのだろう、俺にはほとんど聞きにこないくせにアカデミーの教師やユーリたちにはしょっちゅう学力の相談をしているようだ。
…なんかまたイライラしてきた。
起こさないようにさっさとノートをとって帰るか、そう思って足音を立てないようにユメに近づいた。
……大体、こいつ、なんでいつも俺が座ってる席の近くで寝てるんだよ。
寝てても迷惑なヤツ、そう心の中で毒づいた。
夕焼けが窓から差し込んで、ユメの閉じたまぶたを縁取る睫毛に影をおとす。
間近でみたユメの寝顔は想像以上に俺の心を乱した。
さっさとノートを探さねばと連結した机の通路にかがんで通路から机の中棚を覗くと、ノートはあったもののユメのスカートからのぞいた白い太ももまで視界に入り、誰も他にいないとわかっていても思い切りうろたえてしまった。俺は痴漢か!?
小さい頃は普通に風呂だって一緒に入っていた仲だぞ、平常心平常心平常心……。

俺はユメに向き直った。
運が悪いことに忘れ物はユメの寝てる隣の席の中棚にあった。もし起こしたとしても、そんな場所で熟睡してるコイツが悪い。
俺はそう思ってなるべく音を立てないようにそっとユメの隣の席に座った。
ぎい、と俺の体重をうけて軽く木がきしむ音がしたが、ユメは依然眠り続けている。
内心ため息をつき、机の中に手をつっこんだ瞬間。
「……ん」
ユメがうつぶせの体勢を変えた。
起きたか…?気を遣うのも馬鹿らしいし、どっちにしろ校舎が閉まるまでに起こす必要があるだろう。
ユメを起こそう、俺はそう思って呼びかけた。
「ユメ」
「…んー」
ユメはうつぶせのまま顔を左右にぐりぐりして、片方の手を机の下にぶん、と下ろした。
その手が、俺の右手にわずかに重なって止まった。
正確には、俺の右手の小指とユメの左手の薬指と小指が重なっていた。
眠ってるせいかかなり指は温かかった。
「……ユメ」
もう一度微かに呼びかけたが、睡眠が浅くなったのは一瞬でまた眠りに落ちたらしい。
規則正しい寝息と連動して細い肩が揺れている。
触れている指が熱い。
距離の近さを認識した瞬間、ユメに近いほうの体に一気に血液が集まった。
一番最近手をつないだのはいつだろう。ユメへの気持ちを自覚してから俺はなるべく距離を置くことに一生懸命になっていたから、それがいつだったかは思い出せなかった。
こいつ、こんなに手、ちいさかったっけ。
部分的に触れてるからか、余計に指の重なりを意識してしまう。
出来るならもっと近づきたい。
でも入学直後に勢い余って告白してしまった時彼女を怖がらせてしまった苦い記憶は鮮明だった。
うっかり近づきすぎたら歯止めがきかなくなるのは目に見えていたが、茶色の髪の合い間から僅かに見える首筋の白さに目を奪われた。
ユメのすべてに触れたい。
でもユメが嫌がることはしたくない。
もう随分長い間その葛藤の狭間で思い悩んでいた。
離れれば、あるいは思いを打ち明けてしまえば多少は楽になれるのではないかそう思っていたけど。
告白した後のユメの「何もないことにする」という態度は清清しい程に一貫していた。
「ひでー奴。」
でも相変わらす好きだ、この超ド級無神経女のことが。そんな自分に呆れる位。
引き寄せられるようにユメの頬に俺の唇が触れそうになったそのとき。
チャイムが鳴り響いた。

俺がすごい勢いで飛びのくのと同時にユメのまぶたが薄く開いた。
「……アキト??」
次いでんー、とうなりながら伸びをする。
「あーよく寝た……」
「…よく寝た、じゃねーよ」
俺は頬の赤みをごまかすために機嫌が悪そうに横を向いて言った。
「お前がその席で熟睡してるせいで俺のノートが取れないんだよ、さっさとどけ。」
「え?あ、ハイ。」
寝ぼけているのか、ユメは目をぱちくりさせながらも机の中に手を突っ込み、探る。
「あれー、何も無いよ」
「隣の席だよ」
「あ、あった。ハイ」
笑顔と共にノートが差し出される。
ふん、と鼻を鳴らして俺はそれを受け取り傍らの鞄へ詰めた。
「なによ、ありがとう位言ったら?」
さすがにユメも不機嫌そうになる。
「…休憩するのも悪かねぇけどさっさと帰る準備したほうが良いぜ、校舎が閉まる。」
「へ…ってもうこんな時間!!」
ユメは焦って机の上に出ていた筆箱や教科書類を鞄に放り込みだした。

「やばい、走らないと施錠されちまう」
廊下に出たときはもうギリギリの時間だった。
「アキトには負けないもんねーだ!!」
そういうなりユメは勢いよく駆け出した。
コイツは魔法はからっきしだったけど、足はそういえば速かった。
「…お前がいつ俺に勝ったことがあるんだよっ!?」
反射的に言い返し俺も廊下を走り出した。

「なによ、小さいときはお化けが怖くってトイレ一人で行けなかったくせに!!」
「何年前の話だよ!?」
足は止めずにののしり合い続け、口論が止んだときはとっくに校舎を出ていた。
「なんとか、間に、あったね。」
「くそ、無駄に、会話しながら走ったせいで、息が…」
ゼイゼイいいながら俺たちは顔を見合わせ、同時にぷっと吹き出した。
「ほんと、どうしようもねーなー。」
どうしても、ユメと会話してるとケンカになってしまう。
でも、なんだか久しぶりにいい雰囲気だった。
そんな空気をユメも感じ取ったのかもしれない、俺の感情を伺うような視線は一切向けず笑った。
「ホント、私達ってケンカばっかりだよね。アキトが子供だから。」
「はぁ!?ユメがほとんどの場合原因だろ。」
心底突っ込んだ。
「アキトのせい!」
「ユメが悪い!」
またもにらみ合う。
「……もう仕方ないなー」
ユメはわざとらしくため息をつき、右手を俺に差し出した。
「なんだよ!?」
唐突に突き出された手のひらに、俺はさっき教室で重なったユメの指を思い出した。
頬が一気に熱くなるが、全速力で走った直後だから目立たないだろう。
「仲直り。お互い頑張ろうっていう握手だよ。」
「はぁ!?なんだそれ。」
俺はなるべく冷淡に聞こえるように言った。
さっきユメに触れた右手の小指が熱い。
「……腹減ったしさっさと寮戻るぞ」
ユメに背を向け、スタスタと寮へと歩き出した。
「アキト!!」
怒りを含んだ声が後ろからしたけど、俺は振り向かない。
姉弟だってのに、あきらめようと努力はしてるのに、上手く距離をとれない。
ほんと、重症だ。
完治することなんてあるのだろうか。
右手の小指はまだ熱を持っていて、それはしばらく引きそうになかった。


『遅い初恋の長文5題』
ほんの少し手が触れただけで手が、君が隣にいるだけで君がいる方の肩が、すごく熱い
【君だけに恋してる】様(http://kimikoi.koiwazurai.com/)

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