仲謀ED後 マリッジブルーの花ちゃんです。
すごいネタかぶってそう。
ホントは拍手お礼SS用に書いてたのにそれにしては長くなりすぎてしまいました。


■花嫁の憂鬱
最近、ずっと考えてしまうことがある。
心はそのことで一杯で、ようやく激務の間を縫って愛しい人が会いに来てくれたというのに、私は本当にどうかしてる。
天気もいいし川下りでもするか、そういう仲謀に付き合って私は今船上にいる。
しかし、ゆらめく川面や延々続く川岸の風景を見ているうちにどうしても意識はそのことに囚われてしまう。
「おいっ、せっかく俺が時間つくってやってるってのに、いい度胸してる奴だな。」
横に座っていた仲謀はそういうなり、私の頭を横から抱え込んだ。


「きゃ…」
思わず喉から妙な声が出てしまう。
なんていうか、恋人同士の触れ合いというには随分粗野な扱いだと思う。
どっちかって言うと、兄弟とか友達同士のじゃれあいみたいな。
抗議しようと斜め上にある仲謀の顔を見上げたら、なんだか彼の頬は赤かった。
「変な声だすなよ。驚くじゃねーか。」
…いつもながら理不尽だけど、仲謀のそんな態度にはもう大分なれた。
短気だとか欠点はあるけど、それをもっても有り余る魅力がある人。それが私の恋人だった。
「お前、なんか悩んでることあんのか。」
私は思わずびくっとした。
……あくまでこの気持ちは私の心の中の問題であって、自分でどうにか処理しないとって思ってた。
でも、仲謀の真剣な表情にとてもごまかせる雰囲気ではなくて。
「……もしかして、こないだ言ったことかよ」
躊躇した私を見て、急に仲謀の声が低くなった。
「別に、お前が気が進まないってんなら、先延ばししてもいい。」
暗くなった声のトーンにうつむいていた私は思わず顔を上げる。
『婚儀を挙げたいと思ってる、できるだけ早急に。』
そういわれたのは先週のこと。
この世界に来るまでの常識から言えば早い決断かもしれないけど、お互いの気持ちははっきりしているし私はすごく嬉しかった。
だけど、同時に結婚というのが現実的になると不安も生じてきてしまったのだ。
マリッジブルー、というのはこういう感情なのかな。
「き、気が進まないんじゃないよ。」
私の態度で仲謀に誤解を与えたら嫌だ、そう思って私は言った。
「結婚は、すごく嬉しい。私も仲謀と一緒になりたいって思ってるよ、心から。」
「だったら…なんで」
訝しげな仲謀の表情に私は自分の気持ちを素直に伝える決心をした。
ごまかしたままじゃ、良くない。
「不安になったんだ。」
私の言葉に仲謀は眉をひそめる。
きっと、不安にさせた自分を責めてもいるんじゃないかな、優しい人だから。
「結婚の話が具体的になる前から、仲謀にとって有利な結婚なんて沢山あることとか、立場の違いとかわかってたつもりだったけど」
私はいったん息をついだ。
「……多分、私仲謀のこと好きになりすぎなんだと思う。」
「はぁ!?」
「だからね、大丈夫だと思ってたことが現実に起こったら本当に耐えられるか不安になったんだ。」
言いながら、船の座席から立ち上がった。
今日はいい天気で、川の流れも静かだった。
「私が来た世界では思いあってる男女が夫婦になるってことは、お互い一人だけだって認めることだったんだ。」
晴れないのは私の心だけ。
「だけど、ここの、しかも仲謀みたいな偉い立場の人はそういう訳にもいかないよね。」
頑張って仲謀に笑いかけた。
「解ろうとしたし、仕方ないって思おうとした。
でも、私は…仲謀のことが大好きだから…そんなのすごく辛い。」
涙は、卑怯だから流したくない。
「当主として世継ぎ候補をたくさん用意しなきゃいけないっていう立場はわかるよ……」
なのに、どうしても視界が潤む。
「政治的なつながりもあるし、仕方ないよね。」
現に玄徳さんと尚香さんはお互い一度も会ってないというのに婚姻が成立している。
「立場とか全部ひっくるめて仲謀のこと受け入れたいけど、私以外の人に親しくしてるだけで嫌なのに」
なるべく冷静に言いたいけど、せめて泣かないっていうので私は精一杯だった。
「それ以上のことに耐えられるか自信が持てないよ……。」

「…お前の気持ちはわかってる。」
すこし間をおいて、仲謀は言った。
「不安にさせて悪かった。はっきりしておくべきだった。」
手が伸ばされ、私の頬に触れた。親指で目ににじんだ涙がきゅ、と拭われる。
「お前の国の風習も知ってたし、ここでだって大抵の庶民は妾なんてもってねえ。」
にっと笑った。
「俺は一切妾を置くつもりもないし、お前以外妻にする気は全く持ってない。」
だいたい、妻を複数持つことで後継者争いに発展して国が荒れることも良くある話だからな、そう仲謀は続けた。
「あとは、子供の問題だけどなぁ」
私のほうにチラリと一瞬視線を向けてから、背を向けつつ言った。
「お前が頑張ればいいだろ。何の問題もない。」
「へ…何を?」
仲謀がそっぽを向いて言ったことが良くわからず、私は聞き返す。
「だから!」
私のほうに向き直った仲謀の顔は赤かった。
「世継ぎとかそんなこと気にしてんなら、そんな問題でないくらいお前が産めばいいじゃねぇか」
「えぇ!?」
予想もしない返答に目を見開く私に向かって仲謀は一歩踏み出して、ぎゅっと抱きしめた。
「協力、してやるよ。」
耳元で囁かれ、私の頭は一気に沸騰する。
きき協力、とかって。
おもわずジタバタもがき出した私の両腕を結構な力で抑えて、
「おもしれー顔してる。…まぁそういうとこもかわいんだけどな。」
そういい、仲謀は涙が残る私の目じりに唇を落とした。


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すいませんなんか下品になったかも。甘いのを目指したが失敗しました。
残念な王子も捨てがたいけど、仲謀にオタオタする花ちゃんも見たい。
ちゅーぼーのくせにー、という大小の叫びが聞こえます。

子供を成すより大切なことが結婚には一杯あると思うけど、儒教の国で当主の嫁ですからね。
夫婦関係は揺るがないだろうけど外野がうるさそうです。

※拍手お礼SSはヤンデレ気味王子です。キャラ崩壊。

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